人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「パラドックス13」

全くの偶然でした、この本を図書館で見つけたのは。
例によって予備知識なしで取り掛かります。東尾圭吾の本です。
ブラックホールとかワームとか出てくるのでSFものかと思いきや、やはりSFもの、私の苦手な分野でした。
ところが、
我慢して20ページほど進んだら、これが「とんでもない天災」というのは言葉が足りなくて「超常現象」の世界に連れて行かれるのです。

あ、ある程度のネタバレですから、完全に予備知識なしで読みたいという人はここまでにしてください。

超常現象の世界は人類が突然消えてしまい、消えなかった、というか生き残り(?)の11人が大地震と大型台風や津波などがひっきりなしに襲う東京、つまり異空間でサバイバルを試みるという展開になります。
この小説が出たのが2009年といいますから、阪神淡路大震災の後なのでその時を連想させられる
大惨事の情景描写などが生々しくぐいぐい引き込まれてしまいました。
「ビルが倒壊し道路が波打っている」、と書かれていればすぐにあの恐ろしい光景が目に浮かびます。

おりしも昨日はあれから20年ということもあり、テレビではその時を教訓にするべくドキュメント番組が組まれていましたし
東北大地震のときの津波の映像も同時に流れていましたから
この本の中で起こる超常現象が具体的にイメージできるため、ちっとも超常現象ではない。背筋が寒くなるような印象さえ覚えつつ読み進みます。

さて11人の顔ぶれが刑事兄弟、老夫婦、若者二人、ある企業の専務と部下、女の子を連れたお母さん、そして赤ん坊、看護師、最後にやくざ。合計13名ですが、途中で抜ける(!)ので。
それぞれのキャラクターの描写が面白くて、とはいってもコミカルなわけではちっともなくて、
リーダー役の刑事(警視)を中心に極限の世界に生きようとするときの相克が面白いのです。

本音と正義感、そして人情といった、ひとが人として生きていく上で行動を律するものを捨てて、とにかく生きのびるためのルールを優先するのかしないのか。作者は登場人物にそれぞれ非常に興味深いセリフを吐かせて深い共感を覚えました。

「人類が文明という名のもとに地球に対しさまざまな悪行を蓄積したので宇宙の自浄作用が働いて「天敵」である人類を駆逐しようという力が働いている」
はあるかもしれない、と思ってしまった。地球温暖化で陸が埋没するというのもその「自浄作用」かも
と納得してしまう。

サバイバルに必要な物資を調達しようと銀座の百貨店に入る女子高校生と警視の弟。
女子高生は宝石を身にまとい、「こういうの欲しかった」とつぶやくが、生きるか死ぬかの世界では宝石の価値はない。
阪神淡路大震災のあと私も物欲が失せたのを思い出した。(また出てきましたが^^;)

今ある当たり前の法社会が平穏な状態でしか立ち行かないのだという
言わば当たり前のことを、
大天災に襲われたら、という想像をともすれば
避けて通りがちな私たちに警鐘を鳴らしています。

さて、この11人の運命ですが、いくらネタバレと断ってはいてもここでばらす訳には行きませんσ(^_^;)

本当にタイムリーでした。この本に巡り会えたのは。

名前
URL
削除用パスワード
by jmtravolta_johnta | 2015-01-18 09:14 | | Comments(0)

日々歳を重ねていくだけ、という普通のお婆さんの日記。


by じょんたのおばあちゃん
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31